日本屈指のエンターテインメント・シティであり、数多くの映画館がひしめく新宿。なかでも歌舞伎町のド真ん中、TOHOシネマズ新宿(新宿東宝ビル)の8階から異様なオーラを放っているのは、言わずと知れた「ゴジラヘッド」です。
ゴジラ生誕60年を記念して2015年に設置された巨大な頭部は、初代ゴジラの身長とほぼ同じ52メートルの高さにリアルスケールで再現され、その堂々たる雄姿を目の当たりにした私たちは、まるでゴジラが新宿に襲来したような臨場感を楽しむことができます。
1954年(昭和29年)に誕生した日本初の怪獣映画『ゴジラ』は、当時実際に問題になっていた核実験と被爆をテーマに、水爆実験の影響で海底から目覚めた巨大怪獣が東京を次々に襲っていくというストーリーです。現在までゴジラ映画は、日本製作32作品、アメリカ製作2作品が公開されました。
今や日本のみならず世界各国に熱狂的ファンを持つ人気キャラクター・シリーズとなったゴジラ映画から3作品にフォーカスし、新宿が登場するロケーションエリアをご紹介していきましょう。
1.ゴジラ
1984年に製作された16作目。
2.ゴジラvsキングギドラ
1991年に制作された18作目。
3.ゴジラ2000 ミレニアム(1999年公開)
1999年に制作された23作目。
1.ゴジラ
ゴジラ30周年に合わせて1984年に製作された16作目。同名の第1作目『ゴジラ』の続編として誕生した、手作り感がなんとも懐かしい昭和の最後を飾る記念碑的作品です。この頃の新宿はすでに高層ビル化が進んでいたため、それに合わせてゴジラ自身も初期の頃の身長50メートルから80メートルに、体重は2トンから5トンにスケールアップしています。
新宿駅東口
ショッピング、グルメ、エンターテインメント施設など、多彩な顔をあわせ持つ人気エリアにゴジラが初めて踏み込んでくるシーンは、その巨体をリアルに体感できる脅威の瞬間です。ゴジラに関する緊急報道の映像が映し出されるのは、1984年開館「新宿アルタ」の壁面に設置された “新宿アルタビジョン”です。街頭大型モニターの草分け的存在で、92年まではモノクロタイプでした。政府広報車がゴジラ襲来の危機を市民にアナウンスしながら走行する「歌舞伎町交差点」の昭和ネオン街の風情も登場します。
新宿中央公園
高層ビルに囲まれた緑豊かな都会のオアシス。「公園大橋」「公園小橋」で田中健と沢口靖子によるドラマパートの撮影がおこなわれました。ちなみに、隣接する東京都庁舎は本作の6年後1990年完成なので、劇中では建設以前の景観を垣間見ることができます。
西新宿 高層ビル街
企業のオフィスや有名ホテルが立ち並ぶ、首都東京を代表する摩天楼。空撮による壮大な夜景をはじめ、宇宙核爆発の影響で真っ赤に染まる異様な空、地下通路では避難場所に逃げ惑う群衆が映し出されます。
なかにはゴジラ映画に出演できた嬉しさゆえか、笑顔ムキ出しで爆走する緊張感ゼロのエキストラが見受けられたり、特別出演の武田鉄矢によるギャグパートがあったりして楽しめます。
高層ビル街のド真ん中を暴れまくるゴジラは、国家の威信をかけた戦闘機スーパーXとの壮絶な闘いに突入し、西新宿一帯はまさに戦場と化していくのです。「ハイアットリージェンシー東京(旧称 ホテルセンチュリーハイアット)」「新宿住友ビルディング」「京王プラザホテル」「新宿ワシントンホテル本館」「新宿三井ビルディング」「新宿センタービル」など、多くのランドマークが精巧に再現されています。
『ゴジラ』
大黒島噴火の折に消息を絶っていた一隻の漁船が発見された。船からは放射能の影響で巨大化したフナムシが発見され、ただ一人救助された生存者は巨大な生物を目撃していた。
生物学者・林田はゴジラが蘇ったと断定。原子力発電所を襲ってエネルギーを蓄えたゴジラは、自衛隊の精鋭部隊が待ち構える東京湾に姿を現した。林田は火山の爆発火口にゴジラを誘導し落とし入れる計画を実行しようとするが・・・。
監督:橋本幸治
出演:小林桂樹/田中健/沢口靖子/宅麻伸/夏木陽介
1984年/カラー/103分
配給:東宝
製作:東宝映画
【予告編】https://youtu.be/BNuhGrNu6wk
TM & ©1984 TOHO CO., LTD.
2.ゴジラvsキングギドラ
時代は平成へと移り、東京都庁が日本最高のランドマークタワーとなった絶好のタイミングでのシリーズ18作目。昭和の子どもたちに最も人気が高かった三つ首の巨大怪獣キングギドラを敵手に迎え、ゴジラは身長100メートル、体重6万トン(身長は初期の2倍、体重は3倍!!)に巨大化しています。タイムマシン“マザー”を駆使して、ゴジラの前身である恐竜ゴジラサウルスが生息する1944年の過去や、23世紀の未来とつながるという、ゴジラ版“バック・トゥ・ザ・フューチャー”の様相を呈しています。
東京都庁
1990年12月に完成したばかりの「東京都庁」は、冒頭シーンでいきなり未来からやって来た未確認飛行物体に飛来されます。クライマックスではファイナルバトルの場となり、「東京都議会議事堂」の連絡通路とロビーを一気に蹴り上げ破壊したゴジラの進撃はもはや誰にも止められません。そこへやって来た、サイボーグ化したキングギドラ“メカキングギドラ”とゴジラの死闘により、「都庁第一本庁社」「都庁第二本庁社」もろとも激しいダメージを与えられてしまいます。
近隣エリアでは、前述の『ゴジラ(1984年)』で壁面に大穴を開けられた「京王プラザホテル」を筆頭に、「新宿ワシントンホテル本館」「新宿三井ビルディング」などが再び登場し、迫力ある見せ場が繰り広げられます。
新宿中央公園
大きな翼を広げ新宿まで飛翔したメカキングギドラは、ゴジラとの最終決戦のため都庁に隣接する広大なこの公園に降臨します。そして激闘のさなかにゴジラの反撃で翼に穴があき、公園に墜落してしまいます。
『ゴジラvsキングギドラ』
1992年、東京上空に23世紀の未来人を乗せたUFOが飛来する。彼らは「未来の日本はゴジラの原子力発電所破壊による核汚染により死滅するので、歴史を修正し日本人を救うために来た」と告げる。日本政府は恐竜がゴジラと化す前の時代にタイムワープして、ゴジラの存在を歴史から消滅させようとする。作戦は成功したかに見えたが・・・。
監督:大森一樹
出演:中川安奈/豊原功補/西岡徳馬/小高恵美/原田貴和子
1991年/カラー/103分
配給:東宝
製作:東宝映画
【予告編】https://youtu.be/2GWl-wrwN2g
TM & ©1991 TOHO CO., LTD.
3.ゴジラ2000 ミレニアム(1999年公開)
ローランド・エメリッヒ監督による初ハリウッド版『GODZILLA』の翌年に作られ、「日本のゴジラ復活!」と言わしめた23作目。身長は55メートルに、体重は2.5万トンという初期の体型に戻りましたが、炎のような背びれが強調されたフォルムは迫力満点。地球外生命体との闘いをCG技術をふんだんに用いてダイナミックに描写しています。後半はほぼ新宿が舞台になり、ゴジラ映画のなかで最も“新宿比率”の高い作品となっています。
西新宿 高層ビル街
またしても最終決戦の地となってしまいます。「セントラルレジデンス新宿シティタワー」を覆うように着陸した超巨大UFOが、新宿全域のコンピューターシステムに侵入し、都庁防災センターのメインコンピュータがマヒ。自衛隊車両が駆けつけ人々を避難させるなか、UFO見たさに野次馬が殺到し、西新宿一帯はカオスな雰囲気に包まれます。三連の三角屋根が特徴の「新宿パークタワー」、複合文化施設「東京オペラシティ」などの高層ビル、マンションや一戸建ての家々までもが全滅の危機に瀕してしまいます。
JR新宿駅
“1日の乗降者数世界一”としてギネス記録に認定された巨大ターミナル駅。東京湾から上陸したゴジラが、おなじみのテーマ曲にのせてJR新宿駅を荒々しく通過し、フィナーレとなる決戦地へ向かう姿はまさに“怪獣王”の威厳を感じさせます。また、JR新宿駅東南口改札を出てすぐ左手のファッションビル「Flagsビル」の大型ビジョンも効果的に登場します。
『ゴジラ2000 ミレニアム』
北海道の根室にゴジラが上陸。町を破壊し姿を消すが、茨城県の東海村に再度上陸を果たす。一方、危機管理情報局により茨城県鹿島灘で発見された謎の岩塊が突然飛行を始め、ゴジラと対峙する。ゴジラが熱線を放射すると岩塊の中から巨大UFOが姿をあらわした・・・。
監督:大河原孝夫
出演:村田雄浩/阿部寛/西田尚美/佐野史郎
1999年/カラー/107分
配給:東宝
製作:東宝映画
【予告編】https://youtu.be/aSiwb9ATdBE
©1999 TOHO PICTURES, INC. TM & ©1999 TOHO CO., LTD.
フィクションとはいえ、実在するオフィスビルや商業施設が次々に襲われるという設定なので、劇中で破壊された企業からのクレームも当初あったようです。けれど「ゴジラに破壊されると業績がアップする」という都市伝説が生まれるなど、多くの人々に愛され続ける国民的スターのゴジラ。「核実験」「放射能汚染」「自然環境破壊」といった深刻な問題や、対立する政府と市民の構図など、その時代をリアルに切り取った世相が反映されていることから、現代の我々にとって必見のアーカイブ・ムービーといえるでしょう。
ライター紹介
三輪 泰枝
幼少期に映画館のスクリーンに映し出された配給会社のロゴを見て「この会社に入りたい!」と無謀な夢を抱き、成人して奇跡的にその野望を果たす。ハリウッド映画ソフトのプロモーションと呑み会に情熱を燃やしまくったのち、独立。仕事で携わったアジア映画に魅了され熟れっ子映画ライター(←売れっ子ではない)の道を歩む。容赦なき描写満載の男気あふれる韓国映画が大好物。日本映画ペンクラブ会員。