新宿の百貨店
こんにちは、YOKOSO新宿編集部です。
1枚の写真から新宿の今と昔を比べてみるこの企画。
ときに生き物に例えられる街の変遷を、今回は新宿伊勢丹のある「新宿通り」をターゲットに、この地で双璧を成した2大デパートの歴史を紐解いてみましょう。
まずは、記事上のモノクロ写真。昭和20年代後半の伊勢丹通りを撮影したものです。
クリスマスセール、歳暮と、師走のあわただしく賑やかな様子がうかがえます。
昭和初期、新宿には荻窪や吉祥寺といった新興住宅地の富裕層をターゲットに、百貨店が進出しました。
新宿通りでも「クリスマスセール」の看板を出している伊勢丹や、写真左奥の「MITSUKOSHI」が創業を開始しています。
伊勢丹新宿
伊勢丹は初代・小菅丹治が、養家の「伊勢又」から分家して、1886年11月5日に呉服商「伊勢屋丹治呉服店」を開業したのが始まりです。
もともとは神田にあった伊勢丹が、新宿に移転したのは1933年。戦争による焼失を免れ、今もなお同じ場所に、同じ姿で立ち続ける「伊勢丹」の寡黙な佇まいは、他の百貨店のとの差別化にも成功し、新宿の象徴として機能しています。
写真上部ではためく伊勢丹のロゴの丸枠は、「太陽の丸・人間的な丸味・成熟した円満さ」の3要素を表しています。
三越新宿
伊勢丹が今も新宿を代表する百貨店として君臨する一方、MITSUKOSHIはどのような歴史をたどったのでしょうか。
日本橋に本店を構える「三越」が新宿へ出店を開始したのは、1923年の関東大震災直後です。
追分交番角に「三越マーケット」を開店、その後は新宿駅前(現・新宿アルタ)への移転を経て、新宿通りの一等地に、地上8階、地下3階の大規模な店舗を構えました。当時はまだ珍しかった鉄筋コンクリート造りでだったそうです。
1930年に「三越新宿店」の営業をスタートし、2005年にはファッションビル「新宿三越アルコット」へと大変身。2012年3月31日に営業を終了するまでのおよそ80年、長らく伊勢丹とともに「新宿通り」の双璧をなす百貨店であり続けました。
現在、「三越新宿店」の跡地では、ビックカメラとユニクロが融合した商業施設「ビックロ」が営業しています。
新宿の変わらなかったもの
こちらは昭和30年ごろの新宿通りです。
画像提供:新宿歴史博物館
駅へとつづく新宿通りに立ち写真を比較すると、街全体の高層化が進んでいるのがわかります。
どの時代においても繁華街であったことは確かですが、新宿の規模やレベル、需要と供給における「街の器」は別格です。
ただ、変化を避けては通れなかった新宿の街にも、ひとつ変わらないものがありました。それが戦災も乗り越えた「伊勢丹本館」です。
アール・デコ様式の外装がほどこされた本館は、「東京都景観条例」が定める「選定歴史的建造物」のひとつに選ばれています。
伊勢丹本館以外では、同じく新宿の紀伊国屋書店や、中央区の聖路加国際病院、台東区の国際こども図書館などが「選定歴史的建造物」に登録されています。
「選定歴史的建造物」縛りの街歩きをしても楽しそうですね。
栄枯盛衰、多くのショップや人々がしのぎを削る新宿で、この伊勢丹本館はは末永くその雄姿を誇っていくのではないでしょうか。
(取材/文:ひしもとなつ)